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共立美容外科 仙台院 〜スタッフの声をお届けする『キョウリツインフォメーション』〜
2008年 12月 7日 (日) 17:45


脱毛のための基礎知識(2)熱緩和時間(thermal relaxation time)
by 院長

さて、もう一つの重要な理論は、熱緩和時間(thermal relaxation time)
という概念です。
 Grossmanによると、毛の場合パルス幅(レーザーが出ている時間)は10〜50msecと記しています。当院の脱毛レーザーはいずれもこの条件を満たしております。他院では、この条件を満たしていない機械を使用しているところもあると思われますので、是非注意して調べられるといいと思います。                          

焼灼したいターゲット(この場合毛)をいかに選択的に熱を与えることができるのでしょうか?


Andersonらによれば、1発のパルスレーザー光の照射によって、

(1)レーザーエネルギーを与えられたターゲット(脱毛の場合、メラニン)の温度はカーブを描いて上昇する。
(2)その後、周囲の組織に放熱してターゲットの温度は冷えていくと共に、
(3)周囲の組織が暖められ、組織全体の温度が上がる。
(4)組織全体の温度がゆっくりともとの温度に戻る。

というプロセスを生じるとしています。                        
面白いことに、この工程には時間がかかるものであり、特に、レーザー光が照射された直後、ターゲットは、すぐに放熱せずに、熱を内部に溜め、放熱を始めるまで若干の時間がかかるというのです。
((1)    から(2)へ移るのに、時間差がある.)
Andersonらは、ターゲット周囲の温度分布は、その直径で決まる幅を持つガウシアン分布となるとし、その分布の中心温度が50%に下がるまでの時間を、熱緩和時間(thermal relaxation time)と定義しています。 そして、この熱緩和時間以下のパルス幅(一発の照射時間)で、レーザーを照射してやると、周囲組織が熱ダメージを受けないうちに、ターゲットに対して、不可逆性の熱変性(焼灼破壊)を起こすことが出来るとしています。 (グラフ2)

難しい表現なので、これを分かりやすく、端的な言い方をすると、「皮膚の構造物(例えば、毛根、上皮、メラニン、毛細血管等)は、熱エネルギーが加えられると、各々の熱緩和時間と呼ばれる一定時間、周りに放熱せずに内部に蓄熱する性質を持つ。 そしてこの時間以内で、十分な熱エネルギーを加えてやると、周囲組織を傷つけずに狙った構造物だけを焼灼することができる。」ということです。
実際には、照射から熱緩和時間経過後には、ターゲットは中心温度が半分になるまで放熱を行っているわけですが、ここでは上のように簡潔に考えて進めていきます。(そこまでの放熱では周囲組織はダメージを受けないとされている為)

 例えば、皮膚内のメラニンだけを選択的に破壊する場合を考えます。 メラニンの熱緩和時間は、約5 0 nsecとなっています。 そこで、5 0 nsec以下の短いパルス幅だけ、レーザーを照射し、メラニンの破壊に十分なエネルギーを与えます。
そうすると、メラニンは周囲に対して熱を放熱する隙もなく、温度上昇して、破壊されてしまうので、周囲の組織が傷つくことなく、シミやアザが消えてしまうのです。(グラフ3)
事実、茶色のアザ(メラノサイトーシス)は、各種のQスイッチレーザーと呼ばれる、パルス幅(照射時間)の短い(5〜2 5 nsec)レーザーで、茶アザ、黒アザの治療が行われ、現在、良好な臨床成績を治めているのは、ご周知の通りです。
 さて、Grossmanによれば、毛根の直径は200〜300μmで、熱緩和時間は、40〜100msecとなっています。 それでは、単に40msecのパルス幅で照射すれば、毛根だけを選択的に焼灼する事が出来るのでしょうか?

 レーザー脱毛は、メラニンをレーザーエネルギー吸収の1次的なターゲットとしていますが、レーザー光でメラニンを破壊するのではなく、メラニンからの放熱を利用して、毛根に対し熱損傷を加えることに基づいています。
従って、メラニンが壊れないくらい、ピークパワーの低いレーザー光(弱い光)で、エネルギーをゆっくり与える必要があります。

ここで、先ほどの熱緩和時間のところの説明を思い出して下さい。
今回、メラニンには、ピークパワーの低ぃレーザー光(弱い光)をあてて、前述のようにヽ照射開始から約50nsec後に、周囲組織への放熱を開始してもらい、熱凝固せずに、レーザー光を吸収しては放熱をおこなうという、光を熱に変える仲介役となってもらいます。(グラフ4)
上皮にあるメラニンは上皮にも熱を伝速します。 上皮はまず熱を蓄熱し、次第に温度が上昇してぃきます。 上皮の熱緩和時間は、3〜10 msec と計算されてぃますので、照射開始から3〜10msec後には放熱を開始して、温度の上昇速度がゆるやかになることになりますが、それまでに、たっぷりメラニンからの放熱を受けてしまっては、火傷、もしくは損傷してしまぃます。(グラフ5)
上皮にダメージを与えない条件としては、前述の上皮の熱緩和時間以内に、上皮を破壊するだけの熱エネルギーを与えてはいけないということです。
それでは、出来るだけゆっくりと低いパワー(弱い光)の熱エネルギーを与えればぃぃのかとぃうと、そうでもありません。
そもそも、この治療の目的は、毛根を焼くことなのですから、毛根の熱緩和時間である40msec以内に、毛根にはダメージを与えなければならないのです。 これを過ぎても、のんびり低いパワーで照射してぃると、毛根が周囲組織に放熱を開始し、毛根自体は暖まっていかないため、毛根の治療が出来ません。
ピークパワーを下げるのはぃぃが、毛根を焼くのに十分なエネルギー量を、40msec以内に、メラニンからの放熱によって与えてやることが必要なのです。 また、毛根は上皮より大きいので、焼灼するのに大きな熱量が必要です。 つまり、上皮には、放熱して冷えてもらわないと、毛根よりも先にダメージがきてしまいます。
従って、上皮に影響を与えずに、40msec以内に、上皮より大きな毛根を焼くということを考えると、上皮が放熱を開始する3 msec以上、かつ毛根が放熱を始めてしまう40 msec以下のパルス幅の中に、毛根を焼き、上皮を守る選択的治療が出来る理想的なパル久幅があるはずなのです。(グラフ6) 加えて、上皮にダメージを与えないように、(上皮の冷却速度を超えてエネルギーを与えないように)照射エネルギー量を、上皮のメラニンの密度によって、適正に選択する必要があると考えられます。 Grossmanは、論文の中で多少のマージンをとって、理想のパルス幅を10〜50msecと記しています。                                      
最後に、Grossmanは、論文のDiscussionの中でこのような理論を展開しており、これが臨床結果に基づくものではないことをお断りしておきます。 今後、先生方の実臨床の場で、実際の効果や新しい事実が明らかになっていき、いつの日か、脱毛レーザーが世に広まることを願って、終わりの言葉といたします。

   参考文献                 
1)Ander8on RR, Selective photothermoly8i8: precise microsugery by selective absorption of pulsed radiation: Science 1983; 220: 524-7
2)Melanie C. Grossman,Damage to hair丘)lhdes by normal mode ruby laser pulses. J Am Acad Dermato1 1996; 35:889-94
3)Anderson RR, The optics of human skin.:J lnvest Dermatol, 1981;77:13-9




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