5.安全性
1)医療器具、医薬品の安全性の判定
医療器具、医薬品の安全はどのようにして決められるのかを知る必要があります。まず最初は、動物実験です。マウスやモルモットなどの実験動物に対して医療器具、医薬品を試します。これは、数匹単位ではありません。何十、何百、場合によっては数千、数万となることもあります。勿論、妊娠、奇形、授乳なども検討されます。動物実験で問題がなければ、少数のボランティアに対して実験が行われます。この段階で、初めて人間を対象としたものとなります。ここで問題がなければ、さらに大勢のボランティアにたいして、多くの大学、研究所で実際に試されます。ここで問題がなければ、各国の厚生省がその医療器具、医薬品の認可を行います。認可した後も常に追跡調査が行われており、新しく発見された副作用は常に告知されるようになっております。
2)サリドマイド薬害の教訓
どの段階が一番重要かといえば、実際に「どれだけ多くの人に、どれだけ長期におこなわれたか」です。動物実験をどんなにおこなっても、種差(動物間の遺伝的な違い)があり、完全に副作用を発見できないことがあります。たとえば、サリドマイド薬害の例が有名です。サリドマイドは、マウスやモルモット、うさぎなどでは、どんなに投与しても、子供に奇形は生まれません。そのため、ドイツ、フランス、イギリスはもちろん日本でも認可され、多量に使われました。唯一、米国FDAだけは、猿に置ける実験で異常がでたため、認可しませんでした。結果はどうだったでしょうか?世界中で多数のサリドマイド児がうまれ、世界の薬害史に残る大惨事となったのは、皆様のご承知のとおりです。医薬品については、多少副作用があっても、どうしても使用しなければならないこともあります。最近、サリドマイドが非常に予後の悪い骨髄腫(血液の病気)で有効との研究結果が発表され、FDAは、世界に先駆けて、厳しい条件付で認可しました。
3)シリコンジェルショックの教訓
しかし、美容の目的においては、さらに厳しく、安全性を検討する必要があります。たとえば、十数年前まで、日本、米国でも認可されていたシリコンジェルバックの例をもちだすと分かりやすいと思います。シリコン自体は人体にとって害のないことが、世界中で何百万人に、何十年と使用されており、証明されております。ところが、シリコンジェルの状態だと、いろんな副作用がでることが分かってきました。つまり、物質としては問題のないものでも、形状と量が生体に合わないと、色々な不都合が出ることがわかってきたのです。これは、実際、シリコンジェルを人間の鼻や乳房に注入すると、組織の中に迷入し、にくげ組織を形成し、盛り上がり、変性、硬化するなどの好ましくない結果を示すことが明らかになりました。これは、ジェルを直接組織に注入したためだと多くの人が考え、ジェルがもれないように、バックにいれて豊胸術をおこなえばいいと考えました。実際、何万という人に、このシリコンジェルバックが挿入され、5年を経過した時点では、たいした副作用は見つかりませんでした。この5年までの結果が非常によかったので、世界中の国々、勿論、日本、米国においても、シリコンジェルバックは認可されたのです。ところが、10年以上経過すると、バックからジェルが少しずつ漏れ出し、組織に迷入しだしたのです。丁度、ジェルを直接注入した時と同じ副作用が、10年以上たってはじめて出現したのです。たまたま、この時期に、シリコンジェルで膠原病や癌が発症するという論文が発表され、特に、米国において大騒ぎとなりました。俗に言う「シリコンジェルショック」です。米国の保健衛生省(FDA)は、直ちに、シリコンジェルバックの使用を全面的に禁止しました。そして、何千人に及ぶ徹底的な調査を開始しました。その結果は、シリコンジェルで膠原病や癌を引き起こす証拠は得られなかったとのことでした。ところが、シリコンジェルはバックが破損すると、直接的に組織に迷入し、にくげ組織を形成するという問題が解決されておりません。そのため、いまだに米国では、美容目的での使用を認めておりません。
(だだし、極最近、新しく開発されたコヒーシブシリコンでは、たとえバックが破損しても、組織への迷入がないので、条件付きながら認可されております。)シリコンジェル騒動から明らかになったこと。
- 物質そのものが、例え、長期使用されており、安全性が確立したものであっても、その形状、使用方法、使用量が従来の利用方法と異なれば、望ましくない結果を引き起こすことがある。
- 通常、5年程度の経過観察で安全性を判断しているものであっても、緊急性のない美容目的であれば、10年以上の経過観察が必要である。
- 美容目的の使用であるなら、通常の医療目的以上の厳しいハードルを設けるべきである。
現在のところ、以上の3要件用件をみたすものは生理食塩水バックしかありません。ただし、残念ながらその感触に問題があります。このため、各メーカーが色々な種類のバックを開発しているのです。
| 米国 | EU | 日本 | |
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| 生食 | ○ | ○ | × | 日本を除くほぼ全ての先進国で認可されている。 |
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| シリコン | △(条件付き認可) | ○ | × | 生食に次いで広く認可されている。 |
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○認可、×不認可
※さらに詳しく知りたい方